tender dragon Ⅱ
「だからどうしてもって言うなら、力ずくで離してもらうけど。」
"力ずく"?
それってつまり、2人が喧嘩するってこと?
……ダメだよ、そんなの。
「葉太は俺に勝てないでしょ。」
まるで挑発するかのように、葉太を睨み付けて腕を振り払った。
そんなことは当事者じゃないあたしでも分かった。葉太が希龍くんに勝てないなんて、きっと葉太も自覚してる。
決して葉太が弱いわけじゃない。その辺の不良とは歴然の差がある。
……だけど希龍くんは、更に上をいってる。
みんなが尊敬する龍泉のトップだもん。
…そんな彼だから、あたしも好きになったんだよ。不思議な魅力を持った彼だから。
あたしを助けてくれると思ったから。
「じゃあな、葉太。」
うつ向いて立ち尽くす葉太の横を通って、玄関へと向かう希龍くん。
引き留めなきゃ。
もう二度と会えなくなってしまうような気がして、急に怖くなった。
何か、言わなくちゃ。
彼を止められるような言葉。