tender dragon Ⅱ
グチャグチャになってしまった頭の中で必死に考えていると、希龍くんは振り向いて優しく笑った。
「…バイバイ、美波」
あたしの目を見て
あたしに笑いかけて
あたしの名前を呼んで
彼は別れの挨拶をして出ていった。
"美波"
何度も何度も頭の中で繰り返される希龍くんの声。あたしの名前を呼ぶ、優しい声。
ほんとに、最後の別れみたいに。
―バタン…
去っていった。
唯一ここに残ったのは、あたしの大好きな彼の甘い香りだけ。
「何で…」
最後にあんなに優しく笑ったの?
どうせなら、もう二度と考えたくないと思えるほどに突き放してほしかった。
冷たい目を向けたまま、冷たい希龍くんのまま、記憶を終わらせたかった。