tender dragon Ⅱ

ごめん、葉太。

ものすごく自分勝手で、みんなを困らせてることは分かってる。


ただ一言、"ここにいる理由がなくなった"と言えばいいだけなんだけど、そんなことを言ったらきっとみんな言ってくれる。

"理由なんていらない"って。

それが分かってるから、言えない。

……理由がない、なんて、ただ逃げてるだけ。


理由がないからと逃げて、希龍くんがいないあの場所で希龍くんのことを考えてしまうのが嫌なだけ。


…だけど、やっぱりたまに実感してしまう。

家に帰ると安田さんの家のように電気は点いてないし、楽しそうな笑い声だって聞こえない。


1人は寂しい。


時間が過ぎるのが遅く感じて、誰かに話しかけたいのに誰もいない。今まで隣にいた人たちがいない。

自ら選んだ状況。だけどたまに後悔する。やっぱり戻ってしまおうか、なんて考えてしまったりもする。

涙が出そう。


……それを拭ってくれた彼は、もういない。

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