この空の下で風は唄う
第一章〜中学生編〜
微妙な成長 微妙な距離
床が軋む。
独特な静けさ。
ジリジリとした緊張感。
その場にいた誰もが、ただ一点を見つめていた。
2人の人物が、そこにいた。
体と頭には、重々しい光沢を放つ防具が。
そして手には、一本ずつ竹刀が握られている。
2人のうち、背の高いほうが、踏み込み、相手の頭上目掛けて竹刀を振り下ろした。
しかしそれを軽く避け、今度は背の低いほうが相手の銅に竹刀を打ちつけた。
パァンッ
床と、壁に音が反響する。
「一本!勝負あり!」
誰かの声が響き、それと同時にその場にいた者たちがざわめき立った。
「尾崎先輩かっこいい〜!!!」
女子の黄色い歓声。
それを向けられたのは、この勝負に勝利した、先ほどの背の低いほうの人物。
その人物が、ゆっくりと防具を外す。
茶色がかった髪に、肩の辺りで少し癖がついた髪。そして何よりも端正な顔立ちで、落ち着いた表情をしているのが印象的な、少し中性的な外見の少女。
尾崎 風(おざき ふう)。
双子の姉である彼女は、中学校の二年生になっていた。