この空の下で風は唄う
「ははっ、相変わらず妹思いだね、風」

突然後ろから声をかけられて振り返った。
そこにいたのは、茶色がかった柔らかそうな髪の毛に、メガネをかけた穏やかそうな男。
そのメガネを外すと超女顔だったりする。
このメガネの温厚な少年は、あたしの幼なじみの早乙女 洋平(さおとめ ようへい)。
彼も剣道部所属。
同い年で私と同様に今日から男子の部長。

「おはよ、見てたんだ?」

「うん、女子はみんな熱心でいいね。いずれ男子部が負けちゃいそうだなぁ」

そう言って笑う。
あたしは男子部には、以前まで部長だった先輩と洋平にだけは勝ったことがない。

「いいの?」

「ん?」

「空のこと、起こさなくて」

「あ!!」

あたしが慌てて携帯をかけると、隣で洋平が愉快そうに笑った。

「もしもし、空?」

『……ふわぁーい、おはょ〜、風〜』

「やっぱり寝てたんだ?」

呆れて歩きながらため息をつく。
すると、見慣れた顔が目に入った。
空の遅刻防止策が、頭に浮かぶ。

「いい?空、15分で支度して。
今からチャリで竜太向かわせるから、二度寝しちゃだめだよ」

気の抜けた返事を聞いてから、電話を切って、先程の見慣れた顔に声をかけた。
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