この空の下で風は唄う
坊主より少し長めの短い頭。中学生の割にデカい身長。
一目見て、頭より体の動くままに行動するタイプだとわかるほど、利発さとは縁遠い顔立ち。
一応彼の名誉のために付け足すが、けして不細工ではない。そんなわけで、彼はあたしと空の幼なじみPART2の五十嵐 竜太(いがらし りゅうた)である。

「ってなわけで聞こえたね、竜。5分で家行って空乗せて5分で帰って来て」

「……って勝手に決めんなょ!俺だって野球の朝練で疲れてんのに……」

抗議の声をあげるも、あたしはわざと耳を塞いで聞こえないフリをした。
そもそもこの体力馬鹿が疲れるなんてありえない。

「空が遅刻してもいいわけ?」

「……っ!」

「行ってあげなよ、竜。空待ってるよ、きっと」

あたしと洋平が順番に言えば、竜太は悔しそうな顔をしながらも、「わかったよ!」と返事をした。

「覚えてろよ、馬鹿風!」

「行ってらっしゃい、単細胞」

ヒラヒラと手を振った。
聞こえたかどうかは、別に知らない。

「相変わらず分かりやすいね、竜太は」

のんきに洋平が言った返事は、あえて鼻で笑うだけにした。

……本当、空に甘いんだから、あの馬鹿は。

「あーあ、なかなか平和だね、今日も」

伸びをして、廊下の窓から外を眺めた。
今日の空は、機嫌がいいみたい。

太陽が、暖かい。
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