この空の下で風は唄う
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数学は嫌い。

わけのわかんない図とか、頭が痛くなる数字の列とか。

私は面倒くさくなって、先生の話を聞くのをやめた。
そして、目だけで、窓際の風の席を見つめた。

風は綺麗。
学校では色んな女の子にとっても人気があるけど、影では男の子にも人気があるの、私は知ってる。
柔らかそうなゆるふわのくせっ毛がよく似合ってる。
私の自慢のお姉ちゃん。

けど……

(料理も出来ない、朝も起きれない、勉強も出来なければ、運動音痴……)

そう、七海ちゃんの言った通りだ。
それに比べて、私には何にもない。
どうしてかな、双子なのにこんなに違うの。神様は本当に不公平だ。


「そんなに俺の授業は面白くないか、尾崎妹」

この独特な呼び方に、寒気がした。
目だけでよそ見してたはずが、いつの間にかバレバレな動作になっていたようだ。

「じゃあ余裕そうな、尾崎妹。この問題」

蛇みたいに怖い顔をした先生に当てられた。この先生も苦手だから数学も苦手なんだと一人で納得した。
泣きたい気持ちを抑えて黒板に来たは良いが、全然わからない。

「こら、半べそかいてごまかせると思うな」

(別に嘘泣きじゃないよ、意地悪)

「……じゃあ、尾崎姉。お前がやれ」

ああ…また風と比べられるのかと、本格的に悲しくなってきた時に、風が言った。

「いえセンセ、出来ますよ。空は」

戸惑う私に微笑みながら、風も、黒板にやってきた。
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