この空の下で風は唄う
「いい?空。あたしは手伝うだけだから」

教室中が、私たちに注目しているのがわかって、緊張してしまう。

「大丈夫。出来るよ」

だけど不思議。いつだって、風の「大丈夫」を聞くと、本当に大丈夫な気がしてくる。

風が私にくれる、魔法の言葉。

「うん……」

「いい?まずこっちの式を計算してみて」

教室中が静かで、風の声と、私が黒板に書くチョークの音だけが響いてる。

「そう……それでこの式を、ここに……」

不思議とチョークは止まらずに、答えに向かって進んでいく。

そして……

「出来たっ」

私が、思わず声を上げた。教室が、急にざわめいた。

「やるじゃん空〜」
「やればできんじゃん」
「風もさすが〜!」

クラスメートに誉められて、私は照れて赤面した。風も、隣で笑っている。
怖い先生まで笑っていて、なんだか嬉しくなった。

「全く、俺の授業で姉妹の絆を発揮するな。ほら、席戻っていいぞ」

風が私の背中をぽんと押して、口ぱくで言った。

<やったね>

私も口ぱくで返した。

<ありがとう>

風は微笑んで席に座った。

カリスマ性。
頭に思い浮かんだ。さっき七海が誉めていた事。
クラス中が、風と私を見つめていた。
その世界を作り出したのは、きっと風だった。

私のお姉ちゃんは、本当は私が思っていたよりずっと凄い人なのかもしれない。

今度は純粋に、誇らしく思って、授業を聞くことにした。
< 18 / 30 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop