この空の下で風は唄う
そして最終的に、あたしは今、洋平と同じ傘に入っている。
男2人が口を揃えて、
「「野郎と相合い傘なんてやってたまるか。」」
と、なんとも我が儘(?)な主張をしたので。
洋平とのペアを不満に思うわけではない。
だが…前を歩く2人の、なんとも、初々しい恋人同士のような様子に、言いようのない苛立ちを覚えたのも事実だ。
竜太が空を好きなことなんて、昔からわかりきっている。
でも最近、なんとなくそれが片思いではなくなってきている気がしてならない。
「嫉妬?」
隣を歩く洋平が、小声で聞いた。
あたしは少しだけ洋平を見て、憮然として返した。
「……なんでもお見通しなんだね。」
「そりゃ、俺といるのに前の2人ばかり見てるからね」
「……ごめん」
洋平をほったらかしたことに謝罪して、あたしは2人から目線を外した。
「……空が一番なんだね、今の風は。」
洋平が、穏やかに言った。
今だけじゃなくて、あたしの一番はずっと空に決まってる。
「やっぱり、家族よりもいつか男を選ぶ時が、空にも来るんだよね」
俯いて、呟く。
洋平は、黙ってあたしの話を聞いている。
「本当はわかってるんだ。空がいつまでもあたしの傍に居てくれるわけじゃないって」
「風……」
傘を叩く雨の音に意識をやる。
霞むような雨の中で、あたしは少し前の2人がぼやけているのを見ていた。
わかってる。
だけど……
あたしはまだ、自分の中に答えを見つけられないから。
どうやったら空を繋ぎとめていられるかって、それを探すのに必死なんだ。
――――「微妙な成長 微妙な距離」――――