この空の下で風は唄う
学校に着いたとき、もうチャイムは鳴り終わっていた。
怒られるかな……
そう思っていたのが顔にでたのか、風が優しく

「大丈夫大丈夫」

と笑ったので、安心した。

上履きを履き、教室のドアを開けた。
少しヒステリックな印象の女の先生が私たちを見ていた。

「おはようございます。おふたりとも」
「おはようございます」「……ます……」

先生の視線に怖じけづいて私は思わず風の側に寄った。
ふと教室を見ればクラスメートたちが行儀よく座ってこちらを興味深げに見つめている。
中には竜太くんと洋平くんもいて、二人は心配そうにこっちを見ていた。

「あとで職員室に来なさい」

先生が冷たくそう言って授業が再開した。



「では……空さんの宿題をふたりで取りに行ったのですね?」

職員室で立たされている私たちは遅刻の理由を説明させられていた。
先生の問いに頷く。

「なぜ空さんひとりで行かなかったのですか」

先生が私に聞いた。
私が困っていると風が口を開いた。

「アタシが取りに行こうと言ったから」
「……あなたがたはいつもそうですね……」

先生が呆れたように言った。

「……空さんだけに話します。風さんは戻りなさい」

そうして、職員室には私だけが残されてしまった。
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