chocolate cafe
プロローグ
隣の君
私、古河桃乃[ふるかわ ももの]は
2つ年上の
翠野悠煆[みどりの はるか]に
熱烈片想い中なのだ。
陽くんが隣に引っ越してきたのは
ももが6才の頃のことだと
記憶している。
ももの両親は共働きで
近所に友達はあまりいなかったので
ももはいつも独りぼっちだった。
悠くんが来るまでは。
悠くんがいつも一緒にいてくれたから
ももは寂しくなくなったんだ。
悠くんは不器用だけど、
本当はとても優しくて
心があったかくてね、格好いいんだ。
だからね、王子様みたいなんだ。
悠くんのことは
ずっと大好きだったけど、
それが「恋」だって気付いたのは、
悠くんが都会の方へ
行ってしまったからなのだろう。
ももは4月で高校生になる。
今は、15歳なのだ。
だから、悠くんは高校3年生になる。
ってことは、今は、17歳だね。
こんな年になって、
やっと気付いたんだ。
悠くんに恋してるってこと。
悠くんと手紙を送り合っていた。
最初のうちは
しょっちゅう送ってくれたのに
悠くんが忙しくなるにつれ....
手紙の数は徐々に減っていった。
悠くんに会いたくて会いたくて、
たまらないよ....
悠くんの顔が見たいよ。
悠くんの声が聞きたいよ。
悠くんにぎゅってして欲しいよ..
泣きたくなんかないのに、
涙が零れ落ちてきて、
止まらないよ......
悠くん......
悠くん........
「..泣き虫もも」
そう、背後で聞こえた気がした。
きっと、幻聴だ。
..だって、悠くんは
ここにはいないのだから。
悠くんのはずがない。
「..何、無視してんだよ。
馬鹿の泣き虫もも...
..昔みたいに笑って、
おかえりって言えよ....」
そう、はっきり聞こえたあと、
後ろからぎゅっと抱き締められた。