chocolate cafe

 ..それでも、初対面の人の後ろに
 乗るというのは結構勇気がいるもので
 ももはゆっくりと、
 その人に密着しないよう
 少し離れるようにそぉっと座った。

 ももはその人がくっつかれるのは
 嫌なんだろうなぁと思ったのと
 こんな綺麗な顔立ちの人とくっつく
 というのは結構恥ずかしいなぁ....
 ということもあってそうしたんだ。

 だけど、その人はそんなこと
 全然ないらしいというかむしろ、
 ももが恥ずかしいだろうという
 気持ちは全くお構いなしに
 こんなことを言ってきたんだ。

「もっとくっついてくれないと
 君が危ないから、お願い」

 そう言われて初めて気が付き、
 ももは恥ずかしさを堪えながら
 おずおずとその人にくっついちゃう
 くらいの距離へと近づいた。

 男の人とこんなに近づくなんて
 ももに悠くん以外、
 初めてで心臓がうるさいくらいに
 バクバク鳴っていた。

 身体中が熱を帯びたみたいに
 すごく熱くて熱くて、
 身体中の熱がほつほつと
 上昇していくのが分かった。

 けれど、その人はなんだか
 不満足そうにしていて
 少し、口を開いて
 呟くようにこう言った。


「...もっと、こうやって....」

 と言葉を発すると同時に
 ももの手をグイッと引っ張って
 その人の背中辺りに
 腕を巻き付けさせられた。
 その人はそのまま言葉を続けて..

「そのまま、抱きついてて」
 
 と言いながらふふっと
 甘い笑みを零していたのかな? 

 だって、その人はやけに
 上機嫌に見えたものだったから。


 ももはその人の言葉に従い、
 無理やり巻き付けさせられた腕に
 ぎゅっと力を込めながら抱きついた。

 すると、その人は満足そうに

「よし、じゃあ一緒に学校行こっか」

 と言葉すると、その人は
 自転車のペダルを踏みしめて
 風の中に溶け込むみたいに
 サァーと漕ぎ始めていった。
 

 
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