【BL】夢見桜
あれから何度目の開花だろう。
今宵の夜桜は格別だ。
一人桜を見上げ、息を一つ吐き出した。
「………一人で愛でる桜は、物悲しいな。」
「では、共に愛でましょうか?」
「え………?」
木の陰から聞こえてきた声に、俺は瞠目した。
「二人で愛でれば、楽しいですよ?」
「上総…………」
この声、あの顔、間違えるはずがない。
ずっと帰りを待ち焦がれていた人。
何年も、何年も。
「………上総?」
「どうしたんです?時塚様、そんなに驚いて。」
優しく微笑む彼を見て、俺は理解した。
ああ、これは夢だ。
だって彼はあの日の姿のまま、全く老いていない。