猫と隠れ家
このカフェは中心街にあるがとても狭い店。
一階はテーブル席なしカウンター席のみ、すぐ後ろの壁際に二階席へ向かう階段。
二階にはテーブル席が四席。最上階の三階は大きなテーブルをひとつだけドンと置いた団体客用フロア。
美々のお気に入りは二階の窓際席。
この店は角を曲がって路地に入ってから二軒目にある。
そんな店の二階窓際の席に座ると、角のビルとビルの隙間から夜の繁華街を行き来する人々を眺めることが出来る。
賑やかな夜の街を行き来する人々は、どこか妖艶な気を放っているように感じる。
週末の夜、一人でも二人でも集団でも。誰かが危なげな願望を抱いて歩いている。
それをこっそり、ここから眺める。
ビルの隙間にひっそりと組み込まれているのコンクリートのカフェ。
奥行きはあるけど縦長三階建て。
目に留めないと通りすがって終わってしまいそうな小さな存在感。
そこでこうしてど真ん中の道を行ったり来たりする人間の世界を、秘密の特上ドリンクを片手にひたすら眺めるのが好き――。