星空の下で
翔太が死んで俺は慶太郎と翔太の部屋に向かった。翔太の両親が必要なものだけは持って帰り後の処分は俺達がやると言ったからだ。対して片付けるモノ等なく持って帰るのに邪魔な家電や家具の処分を頼まれた程度だ。

『おい!慶太郎!壁に穴あいてるぞ。翔太の奴殴ったな。修繕費用かかるっつったのに』

『それは俺だ』

『はあ?お前があけたのか?お前バカだろう!お前が無駄に修繕費用かかる事してどうすんだ!』

『もう誰も住まねーだろう』

『とりあえず金払って家電も処分してもらおう。慶太郎!お前なんで翔太が死んでるってわかったんだよ?俺はまだもしかしてと思ったけどな』

『見ればわかる。完全に死んでたよ。管理人に挨拶して帰ろう。俺は仕事行く』

『あぁー』

慶太郎!なんで見ればわかるんだよ。俺はわかんねーよ。翔太を見つけたあの時もお前は言葉は冷静だったけどお前の握り締めてる拳は暴れたくてウズウズしているような感じだったよな。救急車が来て翔太が運び出された時にお前は壁を殴っていたのか?なんでお前はそんなに哀しい顔して言うんだよ。翔太が死ぬ前からお前は何度もそんな顔見せてるんだぞ。翔太が死んだ事はもちろん悔やまれる。でもお前それだけじゃねーだろ。結城さん!慶太郎の闇は時間なんかではやっぱり解決出来ない程深いんすかね。俺が慶太郎に対してあいつの闇は深く哀しいと最初に感じた通りそれは大人になっても変わらぬままです。俺はどうしたらいいんすか?翔太の死が余計あいつを追い込んだようです。俺達はそれでも生きなきゃいけねーんだ慶太郎。翔太の死も受け止めてな。翔太の死から10日程立ち店に立ち寄った慶太郎は怜恩が軽はずみに発した心無い言葉に強く怒りを表しボコボコに殴りつけ慶太郎は店も潰せと言う程怒りと哀しみの感情で溢れていてとても冷静に話し合える状態ではなかった。俺は急遽営業を中止して店を閉めアルテミスのスタッフ全員で話しをすると言い聞かせ慶太郎を帰らせた。悪かった慶太郎。触れない方がいいと思いスタッフには事情をちゃんと話さなかった俺が悪いんだよ。

『怜恩!慶太郎の気持ちがお前はわかるか?わからないんだったら慶太郎の言う通りこの店は潰すべきだな。怜恩以外の者も同じだ。お前らだって悩みぐらいは皆あるだろう。この世界に入ってくるぐらいだ。大なり小なりみんなが何かを抱え生きる為に頑張ってるはずだ。抱えるモノの大きさや重さはそれぞれだろうが悩みのない奴なんかいねーんだよ。だから抱えるモノがみんなあるんだと言う事を忘れるな。ここで一緒に働く仲間となったからにはそれなりの縁が会ってこそ出逢ったんだ。誰もがライバルであるけれどそれ以上に仲間であると言う意識がなければ互いに協力できねーし店も回らねーよ。蹴落とす事ばかり考えてるようじゃな。1人で仕事するんじゃねーし出来ねーよ。やる気がない奴は辞めればいいと俺は思ってる。向き不向きもあるからな。ただ怜恩!翔太はお前に伸びて欲しいと思ってくれていたぞ。お前にも稼ぐ楽しさを知ってほしいって先輩らしくお前の心配をしていた。そんな翔太にお前は何とも思わねーか?感じねーか?親の借金返済の為に頑張ってきた翔太がお前に飯を奢ってくれたんじゃないのか?翔太の気持ちもお前にはわからねーか?わからんねーんだったら残念だな』

『うっく、す、すいません。俺がバカでした。翔太さんにかわいがってもらってて軽い気持ちで言ったんすけど、うっく、言ってはいけない事を言いました。っく、アルテミスは潰さないでくださいっく、瑛太さんとか悲しでいました。みんな言わないだけで翔太さんの事は悔やんでいます。っく、何もしてやれなかったなって言ってたんす。慶太郎さんはいつも俺達みんなに声をかけてくれて俺にもやれば出来るって言ってくれたし翔太さんは慶太郎さんに憧れてるって俺にいつも話してくれました。俺だって慶太郎さんみたいになりたいって憧れていたのに慶太郎さんに嫌われるような事を冗談でも言葉に出すべきじゃない事でした。俺はこの店を辞めます。っく、だからこの店は続けてください!お願いします!翔太さんの為にも翔太さんが愛した店だから続けて下さい!うっく、すいませんでした!っく』

『怜恩!お前が素直にその気持ちを慶太郎に伝えろ。あいつがお前を嫌う事はねーよ。嫌う所かお前の心配をするだろうな。あいつは俺と違ってバカがつく程お人好しだ。俺達の店で働く事になった奴はみんな神の計らいで縁になったんだから全員出来る限りの事をしてやりたいと思う奴だよ。店だけじゃなくあいつの現場で働く者達にも同じようにな。困ってる奴には手を差し伸べたいってのが慶太郎だ。わかるか?怜恩!』

『っく、は、はい!俺かっこ悪いっす。自分で恥ずかしいっすよ。翔太さんのお墓参りに行って謝罪してきます、うっく』

『怜恩!俺も一緒に行くよ。全員順番で行こう!』

『っく、瑛太さん!あ、ありがとうございます!うっく』

『よし。じゃあ今日はもう店も閉めちまったし全員で飲みに行くか!慶太郎はどうせどっかの姉ちゃんとこで飲んでるはずだ。車があるしな!慶太郎の奢りだからお前ら好きなだけ飲め!』

『はい!ありがとうございます!』

『礼は慶太郎に言え。慶太郎を探しに行くぞ!お前ら準備しろ!俺は慶太郎の場所を聞き出すからな』

『はい!』

慶太郎!まだ世の中は捨てたもんじゃねーと俺は思いたい。お前はいつもこの世の中は腐ってると言うけどな。お前が背負ってる大きさや重さを俺も知らねーけどお前がいい奴だって事だけを俺は知っているし結城さんにだって出逢えたからやっぱり俺はまだ世の中捨てたもんじゃねーと思って生きたい。いいじゃねーか。俺らの周りだけでも腐ってなけりゃな。

『おい!問題児!全員連れてきたからお前が奢れよ!アルテミスは続ける。翔太が愛した店だからって事で全員一致したからな』

『あっそう。つうか誰が問題児だよ!』

『慶太郎さん!本当にすいませんでした!俺がバカでした!瑛太さんが一緒に翔太さんの墓参りに行ってくれるって言ってくれたんで一緒に行って謝罪してきます!』

『怜恩!俺はもうけっこう飲んだからお前が頭も心も使わず軽はずみに口走った言葉は忘れた。だけどクソ野郎にだけにはなるな!クズは俺だけで充分だ。俺がクズの変わりに俺の周りはなぜかいい子が集まってくれるんだ。俺が反省にするようにな。翔太によろしく言っといてくれ。俺もいつかいくから』

『はい!わかりました!すいませんでした!』

『俺に謝ってもしょうがねーだろ。翔太に言え』

『はい!』

『怜恩!レオン!飲むぞ!来いよ!慶太郎さんの奢りだから気にせす飲めるぞ!』

『本当にうちの子達はバカが多いね』

『経営者が大バカなんだからしょうがねーだろ!ほら!慶太郎!飲むぞ!』

『大バカって俺っすか?てかトライアンフの方は大丈夫なんすかね?大輔がこんなとこで油売ってて!』

『トライアンフは優秀な詩音と力也がいるし連絡がないから回ってるんだろう。俺はお前に付き合ったぐらいで潰れねーからしっかり仕事はして帰るに決まってんだろ。安心しろ』

『そうですね。悪かった。大輔。お前にまた心配と迷惑かけた』

『お前の迷惑には中学の頃から慣れて麻痺してるんだよ!』

『そうっすね。すいません』

慶太郎!俺達はどんな事があっても生きれるだけ生きていこう。そうするしかないんだ。
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