星空の下で
『大輔!お願い!今度こそ本当にいい男なんだよー!その人さー子供が好きなのに子供が出来ないんだって。だから大輔と雄輔が一緒じゃなきゃ結婚はしないって言うんだよ。雄輔だってあたしと居たいに決まってるじゃん!まだ9歳なんだからさ!ちゃんと家もあるし転校になるけどもうあたしは働かなくていいって言ってくれてるから大輔だって学校に通って普通の小学生やりなよ!ねえ?お願い!』

『お前2ヶ月で捨てられて帰ってきたくせに懲りないバカだな』

『だから次は本当にいい人なんだよ!普通子連れなんて嫌がるよ!それを子供をちゃんと連れて来ないとダメだって言う人なんだよ。雄輔!雄輔は母ちゃんと一緒に行きたいよね?』

『う、うん。でも兄ちゃんが行かないんだったら行かない』

『大輔!あんたのわがままで弟にまで苦労させるつもり?行こうよ!6年生からでいいからさ!』

『苦労ってもうとっくにしてんだよ!バカ!お前の勝手に俺らが振り回されてんだろ!そんなこともわかんねーのかよ!バカ女!』

『もういいじゃん!男が昔の事をいつまでも根に持つんじゃないよ!決まりだからね!この家だって解約する。あんた住むとこなくなるよ!雄輔にホームレスでもさせる気?弟の為を思うならあんたが我慢しなよ!金の心配もしなくてすむのに何が不満なわけ!』

『わかったよ。行きゃいいんだろ!本当に次も捨てられなきゃいいけどな。もう俺達に帰る場所なんてねーぞ』

『ありがとう!大輔!やっぱりあたしの息子だね。今度は本当に大丈夫だよ!公務員だし安定してる!来月には引越しをして4月からは大輔と雄輔は転校だから友達にさよなら言っときなよ!』

『学校なんかほとんど行ってねーのに友達なんかいるかよ!バカ!』

『僕はいるよ!転校は嫌だ!』

『雄輔!あんた転校ぐらいでガタガタ言わないで!ご飯食べられなくてもいいの?また新しい学校で友達ぐらい出来るよ!だからさよなら言っときなよ!』

『うん。わかった』

『雄輔!しょうがないんだ。我慢しろ。転校なんてよくある事だ。俺が一緒に学校行くんだから大丈夫だ。何かあったら俺が守るからよ!』

『兄ちゃん!本当にちゃんと学校行くの?』

『あー。本当に男がいい人ならな』

俺は二回目の転校をする。雄輔は初めての転校だから不安なんだろうな。俺はここに引越す事になった時もう二度とこの家を離れないって決めたのに。バカ女について行ってもロクなことにならなかったからだ。結局住む所を失って散々苦労するハメになる。家賃を払わねーって言われたらもう俺ではどうする事も出来ないんだよ。許せ雄輔。ガキの俺らは結局無力で所詮ガキだけで生きていくなんて事は無理なんだ。今まで生きてこれたのが奇跡ぐらいなんだよ。お前を殺さなきゃいけなくなるよりマシだろ。俺だって最悪の結末なんか望んでねーんだよ。

『大輔くん!こんばんは!久しぶりに会えたね』

『もうおっさんとは会えないよ。俺引越しするんだ。学校も転校する。違う街へ行く。だから会えない』

『そうか。俺も転勤になってね。だから俺も引越しだよ。これも運命だね。君との約1年はいい想い出になったよ。次はいいお父さんだといいね。君がちゃんと学校に通えて元気に生活している事を願っているよ。君は強いから大丈夫だろうけど友達を作りなさい。大輔くん!友達は必要だよ。親や先生、大人に話せない事だってあるだろう?親友を1人でもいいから作りなさい。もちろん多ければ多い方がいいけどね。君の心の痛みを理解してくれるようないい友達を作りなさい。元気で頑張ってね。また神様の計らいで出会える時には出会えるよ。君とも縁があるみたいだから。また今夜みたいな星空の下で君と語れる事を楽しみにしているよ』

『うん。俺は強くなんかないよ。でも強くなる。弟を守らないといけないからな』

『そうだね。君なら守れるよ。それから人間はみんな弱いって言う事も知っておいて。自分の弱い所をちゃんと認めないと本当に強くはならない。君は強くないって自分の弱さを認めた。だから強くなれると俺は思うよ。大人になった君にいつか出逢えたらいいな。まあ神様に任せよう。運命とは不思議なものだからね』

『うん。あっ!おっさん!俺あんたの名前聞いてない!いつか神の計らいで出逢っても名前も知らなかったら大人になった俺とじじいになったおっさんじゃ気づかないぞ!』

『あー。そうだね!俺は結城壮一郎。君はまた苗字が代わるんだろ。だから君が俺を見つけてくれよ!大輔くん!さようなら!元気でな』

『うん!俺おっさんと出逢えていや壮一郎と出逢えて良かった。ありがとう!結城壮一郎さん!あなたも元気でな!』

『うん。ありがとう!』

結城壮一郎。あなたに俺は1年間で色々な事を教わったよ。マジありがとう!またいつかどこかで逢えるのを楽しみにしてるからな!

『大輔!雄輔!行くよ!忘れ物ないんでしょう?新しいお父さんが待ってるよ!』

『うん!』

『お父さんとは認めてねーよ。生きる為に行くだけだ。勘違いするな!バカ女!』

『あんた本当に嫌な子だね!早く行くよ!』

よし。片付いた。2年間お世話になりました。慶太郎!俺はまた違う街へ行きます。君が塾の行き帰りをするこの駅でいつか出逢えるかもしれないと少し期待していたけれど神様は俺達を出逢わせてはくれないみたいだな。さようなら慶太郎!中学受験頑張れよ。お前は充分頑張っているんだろうけどね。お前が大人になったら俺の知らない君の事を教えてくれよ。どう生きてきたのかを俺に話してくれたら嬉しいよ。そんな日が来るのを待ち望んで俺は生きていくよ。
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