星空の下で
『慶太郎!今日卒業した先輩達がバイクに乗せて走ってくれるらしいから行かねーか?恭一と誠は来るぞ。雄一郎と謙也はデートだからパスらしいけど。ユズルは波乗り行くって』

『あー俺もパス。夏休みになったしもう1人の親父の所にちょっと帰ってくるわ』

『了解した!まあ夜中には帰ってるからお前も気が向いたら家寄れよ』

『あーわかった。大輔!気をつけろよ!』

『はあ?お前からそんな言葉を聞くとは意外だな』

『心配してやってんだよ!俺ら思春期に持て遊ばれてるからな』

『あーわかった』

慶太郎!お前さー時々ぼうっとした顔が哀しくて苦しいって表情してるって気づいているか?お前に何があったか知らねーしお前が語らない限り俺も根掘り聞く気はねーけどお前はいったい何を背負ってるんだよ?俺はお前を守っていける男にどうやったらなれんだろう。俺が憧れた人とはかけ離れた俺の生き方でお前を救える自信が今の俺にはない。あの人なら結城壮一郎さんなら慶太郎を救ってくれるんじゃないかっていつも思うよ。まだお前と出逢って数カ月なのになぜだか昔から知ってるような感覚になるのはなんだろう?

『雄一郎!大輔達がパクられたってマジか?』

『あぁ。無免の先輩のケツに乗ってて恭一と誠はうまく先輩と逃げたらしいけど大輔と他の先輩達はパクられたみたいだ。てゆうか慶太郎!お前はなんでいきなり頭丸めてんだよ』

『ちょっとな。親父にやられた。大輔は家裁か?』

『あーでも大輔は保護観察ぐらいだろ。すぐ戻ってくるんじゃねーか』

『大輔はおとなしくしてなきゃヤバイな』

『慶太郎!波乗りいかねー?今日いい波みたいだ!』

『あー。行こう。ユズル』

俺は中2の夏休みに入った頃先輩のバイクの後ろに乗りあえなく捕まった。まだ誕生日を迎えていない俺は13歳で運転していたわけでもなかった為に保護観察と言う軽い処分で済んだ。二学期が始まりしばらくして登校した俺は久しぶりに仲間の顔を見たがただ1人慶太郎だけがいなかった。誰に聞いても慶太郎の行方はわからないまま10日程してようやく慶太郎が俺の家に姿を見せた。

『慶太郎!お前何してたんだよ!どうかしたか?』

『おかえり!大輔!ちょっと旅に出てただけだよ。とりあえずビールある?俺買ってこようか?』

『いやあるからいいよ!入れよ。んでなんでお前は坊主なんだよ?』

『もう1人の親父に最後のお仕置きをされたからだ。これでも随分伸びたほうだぞ。マジありえねーぐらい尻叩かれて高校球児なみに丸められたからな。俺はあの親父だけには逆らえないんだ。唯一俺に愛情を与えてくれた人だからな』

『そうか。なんで最後なんだよ?』

『死んだんだ。夏の終わりと共に一緒に消えちまった。もっと会いに行ってりゃ良かった。いつでも会えて当たり前だと思ってた俺がバカだった。迷惑と心配しかかけてない。大輔!飲もう!お前が戻ってきたお祝いだ』

『あぁー。酔いつぶれるまで飲もうぜ』

慶太郎!お前は大丈夫なのか?そのもう1人の親父だけがお前の心の支えだったんじゃねーの?それを失ったお前はこれから生きて行けるのか?お前しばらく見ないうちに随分痩せたぞ。元々細いわりには筋肉をつけていたけど筋トレもせずそれに食わずにいたんじゃねーのか?そんなんじゃ喧嘩してもお前やられるぞ。またもういつでもやられてもいいってぐらい無防備な感じじゃねーか。俺はお前に何が出来るんだ?結城壮一郎さん!俺は大切な親友をどう守ればいいんすか?慶太郎は浴びる程酒を飲み深い眠りに落ちた。俺も慶太郎に付き合いかなり飲んだがなぜか今日はいくら飲んでも酔えなかった。俺も慶太郎も所詮まだ中2。俺達はまだまだ弱いんだろうな慶太郎。一緒に強くなろうぜ。
< 8 / 21 >

この作品をシェア

pagetop