想い出、そばに(仮)
「雪那、だいじょーぶ? 顔、険しいよ」
「ん、あ、平気、だよ」
愛梨は、よく気づく。
きっと、翔ちゃんの次くらいに。
だから、翔ちゃんは、気づいてるはず。
でも、翔ちゃんは何も言わない。
私が、言わないでいいって言ったから。
「愛梨、そういえば、一時間目、体育でしょ?」
「そだよー。だから、今日は朝のショートホームルームないの」
嬉しそうに笑う愛梨。
「うん、そうだね。だから、忘れてるのかな、二人共。あと五分で予鈴鳴るんだよ」
愛梨が慌てたように時計を見た。
それから、きゃーと悲鳴をあげて教室を出て行く。
「まったく、ね。ところで、翔ちゃんは、いかないの?」
まったく動こうとしていない彼に尋ねる。
もう、教室には私と翔ちゃんしかいない。
「行かない」
「はい?」
「今日は、雪那がおかしいから」
「なっ…何、言ってんの、変、だよ」
「変じゃないと思うよ」
「授業、さぼっちゃダメでしょ」
「一回くらい平気だよ。ね、何かあったでしょ?」
こうなった翔ちゃんは、なかなか扱いが難しい。
でも、このまま彼に流されちゃいけない。
「なんもないって。何かあったら絶対言うから、ね」