想い出、そばに(仮)


「雪那、だいじょーぶ? 顔、険しいよ」

「ん、あ、平気、だよ」


愛梨は、よく気づく。
きっと、翔ちゃんの次くらいに。


だから、翔ちゃんは、気づいてるはず。
でも、翔ちゃんは何も言わない。
私が、言わないでいいって言ったから。


「愛梨、そういえば、一時間目、体育でしょ?」

「そだよー。だから、今日は朝のショートホームルームないの」

嬉しそうに笑う愛梨。

「うん、そうだね。だから、忘れてるのかな、二人共。あと五分で予鈴鳴るんだよ」

愛梨が慌てたように時計を見た。
それから、きゃーと悲鳴をあげて教室を出て行く。


「まったく、ね。ところで、翔ちゃんは、いかないの?」

まったく動こうとしていない彼に尋ねる。

もう、教室には私と翔ちゃんしかいない。


「行かない」

「はい?」

「今日は、雪那がおかしいから」

「なっ…何、言ってんの、変、だよ」

「変じゃないと思うよ」

「授業、さぼっちゃダメでしょ」

「一回くらい平気だよ。ね、何かあったでしょ?」


こうなった翔ちゃんは、なかなか扱いが難しい。
でも、このまま彼に流されちゃいけない。



「なんもないって。何かあったら絶対言うから、ね」



< 11 / 35 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop