想い出、そばに(仮)
「…雪那?」
「しょーちゃん」
声がする。
声しか、わからない。
「しょーちゃん、ここ、どこ」
「保健室。薬のにおい、わかんない?」
「そっか。部活、終わったの?」
「終わった。帰ろうか、待たせてごめん」
「待ってないよ、全然」
翔ちゃんが、私の手を握る。
いつもどおり、左の手を。
「雪那、君、何をしたの」
翔ちゃんがいつになく怒りを含んだ声で言った。
「どうして」
「この手は、何」
手。
なんだろう。
あ。さっきの、血…!
「落ちた、の。で、瞼が、切れて、で」
「見せて」
翔ちゃんの手が、私の前髪をかきわけた。