想い出、そばに(仮)
制服に着替えて、廊下から二階に向かって声をかける。
翔ちゃんはすぐに降りてきた。
「じゃ、行こうか」
玄関に行き、靴を履くと翔ちゃんは私の手を握った。
二人で我が家にいってきます、と告げる。
奥でお母さんが答えた。
今朝もいつもとなんら変わりない朝だった。
少し、翔ちゃんについて話そうと思う。
翔ちゃん、本名は市ヶ谷翔太。
同い年の17歳。
部活はバスケ部。
身長は高い。確か、186cmだったはず。
ついでに、モテる。
私には出来すぎた幼馴染。
幼馴染でなければ、接点なんて持てないくらい。
「…はぁ」
「? どうしたの、雪那。ため息なんかついて」
「ん、なっ、なんでもないよ。…あっ! そうだ、翔ちゃん、おはよう! ……まだ、言ってなかった、でしょ?」
キョトンとした顔のあと、翔ちゃんは満面の笑みでおはようって言ってくれた。