想い出、そばに(仮)
30分間、穂乃果先輩は私の話し相手をしてくれた。
中学まで自分も選手だったという先輩の練習の実況は、面白い上にわかりやすい。
「雪那、お待たせ…っと、すみません、坂本先輩」
「あら、市ヶ谷くん。お姫様、返すね」
「穂乃果先輩っ」
顔が熱い。
絶対に、赤い。
「…確かに、返されました」
「しょっ翔ちゃんっ」
笑って言う、翔ちゃん。
まったくもう。
「ほら、行くよ、雪那」
「…はーい」
ステージから降ろされ、翔ちゃんに手を持ってもらった時、穂乃果先輩が私の耳元で何かを言った。
「っ!先輩っ」
確信犯であろう穂乃果先輩は朗らかに笑っていた。
……翔ちゃんに聞こえてたらどうすんですか、もう。