ひとつ、屋根の下で
PAGE.0


微かな温かさを残して、彼の唇が離れていった。


「……好きだよ」


甘い、甘い、彼の言葉に。


声に。


かあっと顔が熱くなって。


ドキドキと速いままの鼓動を止めることもできなくて。


私はただ、恥ずかしくて、だけど嬉しくて、彼の言葉に俯きながら小さく頷いた。



────私も、好き。


そう、心の中で呟いた。



彼と。


先輩と、こうしてキスをするのは、まだ3回目。


私のファーストキスは、先輩。


1か月前、屋上で優しく唇を重ねてくれた。


触れるだけのキスは、温かくて、優しくて。


恋愛経験なんかほとんどない、ウブでコドモな私には、そんなキスでも物足りなさなんて感じる余裕はまだない。

< 1 / 377 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop