ひとつ、屋根の下で
金曜日の昼休み。
実習棟の端にある、旧化学室。
今は使われなくなったその部屋は、化学室とは名ばかりの物置。
古くなって使われなくなった机や椅子。
申し訳程度に紐でまとめられ部屋の片隅に追いやられた雑誌や新聞類。
そんな沢山の物たちであふれた雑然とした部屋で、私は先輩の隣にいた。
今は、私だけの先輩。
先輩が私だけを見てくれる、特別な時間。
私が凌の家に下宿を始めてからも、私と先輩との関係は変わらなかった。
凌にほっぺにチューされて、ハグされて、そんな初対面の後の先輩との密会はちょっとだけ罪悪感を伴ったけど。
でも、私は先輩のカノジョじゃない。
あれは仕事のために恋人みたいなことをしてるだけ。
そう思えば、そんな罪悪感も薄れていた。