ひとつ、屋根の下で
「……可愛い」
やがて唇が解放されれば、ぼうっとした頭にそんな先輩の声が響く。
瞬間。
「っ!?」
急に、意識がさめた。
ぼんやりと甘い幸せに浸っていたさっきまでの場所がすごい勢いで遠ざかっていく。
急にびくりと身体を揺らした私に、先輩が不思議そうに首を傾げた。
「どうしかした?」
「い、いえ。なんでも……」
私の言葉に、先輩は「そう?」とたいして気にした風もなく、ゆっくり私を抱き寄せた。
ギュッと優しく抱きしめられて、大好きな先輩の温もりを感じて。
……幸せを、感じなきゃいけないのに。