ひとつ、屋根の下で
せっかく今日は先輩と会えた。
ハグも、キスも、なんだかいつもより甘かった。
……そんな先輩の感触、消したくないよ。
しかし、凌にそんなことを言えるはずもなく、ただ拒否するしかなかった。
「ふーん。逆らうの?」
久々の脅しモードに、思わずキュッと顔が歪む。
だって。
嫌なものは、嫌なんだもん。
「ハグが嫌なら、別いいや」
「へ」
あっさり引き下がった凌に拍子抜けして、間の抜けた声がでた。
「じゃあ、今日はキスしよっか」
そう言った凌の言葉を上手く飲み込めず。
「……はい!?」
しばし、間を置いてやっと声が出た。
ハグもだめなのにチューがいいわけないだろうが、と叫びたいのを必死に堪え、
「だ、ダメに決まってるでしょ?」
と諭すような声色で言ってみた。