ひとつ、屋根の下で
「……もうそんな関係やめろよ。バレて傷付くのは沙波だろ。戸倉はどうせ雨宮を選ぶんだから」
初めて、止められた。
今まではこんなこと、言ってこなかったのに。
そのことに驚きつつ、凌の言葉が的を射すぎていて辛くなって、思わず唇をかんだ。
「いいよ。そもそも、千依から先輩をとろうなんて思ってないもん」
「……お前の戸倉に対する気持ちなんて所詮その程度なんだよ。戸倉だって、お前みたいに可愛い奴に好かれて悪い気はしないから遊んでるだけだろ」
「せ、先輩はそんな人じゃない!」
遊んでる、とか、たしかにそんな噂はあるけど、そんな人じゃない。
千依と比べたら、そりゃあ私への想いなんて小さいものだと思うけど。
でも、先輩がくれる「好き」は、嘘なんかじゃないと思うんだ。
私のことだって、ちょっとくらいは好きだと思ってくれてるって、信じてるもん。
「もしそうだとしても。雨宮にばれる前に、やめとけ。……こんなのずっと気付かれないわけないだろ」
傷付くのはお前。
だけど、お前だけじゃないんだ。
……凌の言葉が、胸を抉った。