ひとつ、屋根の下で

凌に、先輩との関係を咎められてからというもの。


私はなんとなく凌を避けてしまっていた。


避ける、といっても同じ家に住んでいるわけで、同じテーブルでご飯を食べるわけで。


だから、顔も合わせない、というまではいかず、ただ単に凌との間に気まずい空気が流れている、という程度ではあったけど。



「おはよー」


いつもはふたりで登校するけど、最近はまた少し時間をずらしている。


私が悪いのは分かっているけどどうにもできない。


一緒に住んでて嫌でも毎日会うんだし、どうにかしたいけど……。


はあ、という大きなため息と共に教室に入り、自分の席に着く。



「千依、おはよ」


前の席に座っている千依に声をかける。


いつもなら、私が挨拶する前にくるりと振り向いて、にっこり笑って「おはよう!」って言ってくれるんだけど────。



そんなことを心の片隅で思ったけど、違和感と言うほどではなかった。


私が来たのに気付かなかっただけかもしれないし。


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