ひとつ、屋根の下で
「……身体冷えてんだろ。早く帰って寝ろ」
そう言って、凌は抱きしめていた身体を離し、私の手を掴んで立ち上がらせると、歩き出した。
掴んだ手は、そのままに。
凌に言われるまで気付かなかったけど、凌の手をすごく温かいと感じる私の身体はきっと冷え切っていたのだと思った。
「……私、馬鹿だよね」
学校を出て家に向かう途中、思わず零れた言葉。
私の隣を歩く凌は、いつもならきっと「よくわかってんじゃん」なんてからかうくせに、今日ばかりはそう言ってくれなくて。
「……別に、俺はそうは思わねーけど」
なんて言うから、私はまた泣きそうになってしまった。
「初めてお前と戸倉が会ってるとこ見たときは、お互い遊びなんだろうって思ってたけどさ。
……お前はちゃんと本気だったってのは、途中から気付いてたから」
「本気でも、ダメな恋でしょ?浮気なんて」
「ダメな恋でも、恋は恋だろ」
なにそれ。
なにそれなにそれ。
まるで私のことを許してくれるみたいな優しい言葉。
……そんな甘やかしてくれなくたっていい。
私は、本当に、馬鹿で、ダメな恋しかできなくて。
そう、認めてくれて、いいのに。