ひとつ、屋根の下で
「……なんで皆、そんなに冷静なの?なんで感情的に私のこと責めてくれないの?……逆につらいよ……!」
いつの間にか、掴まれるというよりは握り合っていた掌。
私はその手に力を込めて、立ち止まった。
「……何言ってんだよ」
相変わらず、静かな凌の声。
「私、ダメなヤツなの。馬鹿なんてもんじゃない。……ホントに、最低なの」
「はあ?」
「私ね。傷付いてる。千依を裏切って、先輩を失って。……でも、後悔、できないの」
あのとき。
千依じゃなくて先輩を選んだこと。
間違った選択だったって、わかってるのに。
間違いだと知っていても、傷付くと分かっていても、何度だって同じ過ちを繰り返すと思うんだ。
「それくらい、先輩のことが好きだったの……っ!」
一時の儚い夢でも。
私は先輩といられて、本当に、幸せだったんだ────。