ひとつ、屋根の下で


1年前の、秋。


初めて会ったときから、先輩は最低な人だった。



「……え」



私は、目の前の光景が信じられずに目を瞠っていた。



驚きと、見てはいけないものを見てしまった衝撃に、逃げようにも足が動かない。



それに、私と同じくらい、いや私よりむしろ驚いた顔をした先輩とガッツリ目が合って。


私はただただ、知らない綺麗な女の人とチューをしていた先輩を、親友の彼氏を、呆然と見つめていた。




「ちょっと、邪魔しないでよ」


気の強そうな女の人が、先輩の首に巻きつけていた腕をゆるめて、私を睨んでくる。


「じゃ、邪魔って……!こんなところでそんなことしてる方が悪いんじゃないですか!!」


私はただ、この音楽室に忘れ物をとりに来ただけだ。


断じて、ここで逢引きが行われてるのを知ってきたわけじゃないし、ましてや邪魔しようなんて……。


< 141 / 377 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop