ひとつ、屋根の下で
1年前の、秋。
初めて会ったときから、先輩は最低な人だった。
「……え」
私は、目の前の光景が信じられずに目を瞠っていた。
驚きと、見てはいけないものを見てしまった衝撃に、逃げようにも足が動かない。
それに、私と同じくらい、いや私よりむしろ驚いた顔をした先輩とガッツリ目が合って。
私はただただ、知らない綺麗な女の人とチューをしていた先輩を、親友の彼氏を、呆然と見つめていた。
「ちょっと、邪魔しないでよ」
気の強そうな女の人が、先輩の首に巻きつけていた腕をゆるめて、私を睨んでくる。
「じゃ、邪魔って……!こんなところでそんなことしてる方が悪いんじゃないですか!!」
私はただ、この音楽室に忘れ物をとりに来ただけだ。
断じて、ここで逢引きが行われてるのを知ってきたわけじゃないし、ましてや邪魔しようなんて……。