ひとつ、屋根の下で

「彼女がいるから浮気になるんでしょうがーっ!」



千依の彼氏じゃなかったらなんの問題もないから!!



「あ、そっか!!……いや、だから俺は、あの人にもう今までみたいに会えないって、お断りをしに来たんだけど……、来たはずだったんだけど、なぜかいつのまにかあんなことに」


そう言って困ったように眉尻を下げる先輩は、本当にどうしてあんなことになったのか不思議に思っているようだった。



……この人、大丈夫?


千依の彼氏って言っても、実際会って話をするのは初めてだ。


すごくカッコいいから、名前も顔も知っていたけど、本当に、知っていただけ。



「……じゃあ、千依っていう彼女ができたから、今までの人と関係を切ろうとして、だけどいつのまにかチューしてたってことですか?」



そんな馬鹿なことがあるもんかと思いつつもそう訊くと、先輩はコックリと頷く。



「なにがどうしたらそうなるんですか!!」


「うーん、本当にね」



首を傾げるその仕草に嘘はなさそうで。


まさか、千依の彼氏が、そしてかの有名な王子が、こんなおとぼけ野郎だとは思っていなかった。


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