ひとつ、屋根の下で


先輩は、いつだって優しく私を包んでくれる。


だから、安心して身体を委ねられるんだ。



私は、先輩の背中に両腕を回して、ぎゅうっと力いっぱい抱きしめる。


「……甘えん坊だな」



くす、と頭上から優しくからかうような声が降ってきて、強く抱きしめ返してくれるその腕が、愛しい。




────たとえ、この腕が。


甘い言葉を紡ぐ、この声が。



私のものじゃなくたって、それでも、いい。



深く心に沁みる好きの気持ちに、私はそう思った。



……そのとき、だった。




「っ!?」




ガタンッ、と背後で物音がした。


びくりと私の肩が震える。


先輩はゆっくり私の身体を引き剝がすと、眉間に皺を刻んだ。



「……見られた?」



ひっそりと、先輩がそう呟く。


その厳しい表情に、どうしようもなく胸が締め付けられた。

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