ひとつ、屋根の下で

「じゃあここで待ってて。適当に買ってくる。なんか食べたいもんある?」


結構混雑していたけれど、運よく空いているテーブルを外に発見して、そこに私を座らせると、凌はきょろきょろと周りを見渡しながら言った。



「ううん。凌が食べるもの、ちょっとちょうだい」


そう言うと、凌の視線がふっと降りてくる。


その目は、心配そうな色をしていて。



「……まだ食欲ねーの」



凌の言葉に、私は曖昧に笑った。


そんな私に、凌は何か言いたそうな表情をしていたけれど、結局何も言わずに頷いて、人混みに消えていった。



……ごめんね、凌。


こんな私で、ごめん。


心配掛けてるってわかってるけど、もう、なんだか上手く笑えない。


一緒にいられて、それだけでいいって思ってた。


仕事のためでも、私を必要としてくれるならそれでいいって。



……そんなの、無理なのにね。


< 223 / 377 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop