ひとつ、屋根の下で


飛び込んできたのは、耳まで真っ赤にした凌。


似合わないよ。

そんな顔。


いつも整いすぎて、なにをしてもカッコいい凌が、歯の浮くような自分のセリフでそんなふうに赤くなってるなんて、似合わない……。



そう思うのに、凌の言葉が嬉しすぎて。


今日のお出かけも、「可愛い」の言葉も、仕事のためだけじゃなくて、私のことを元気づけようとしてくれたからなんだって思ったら、泣きたいくらい、心が温かくなった。



「……凌」


考えるより先に、名前を呼んでいた。


無意識のうちに、片手を凌に向かって伸ばしていた。


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