ひとつ、屋根の下で
「っ!?」
黒い服。
黒い帽子。
黒いカメラ。
異様なくらい近い距離に、その人は立っていた。
目深にかぶった帽子に影になった顔。
薄い唇が印象的な口元が、不気味につり上がって笑みの弧を描く。
長い袖からすらりと伸びた長い指。
しっかりカメラを握ったその手に、ゾッと背筋が凍る心地がした。
「い、や……っ」
掠れた声で、そういうのが精いっぱいだった。
……目の前にいるのは間違いなく、この前のあの人。
逃げたくても、この前の恐怖がフラッシュバックして、身体が見えない何かに縛り付けられたように動けない。
そんな私に、その人はカメラを向けた。