ひとつ、屋根の下で
「雅季、あのきもいやつ、追いかけて捕まえてきてよ!!」
私の肩に手を置いた千依が、傍に立っていた先輩に怒鳴るけれど、先輩はきっと困ったように笑っただろう。
……俯いているせいで見えなくても、それくらい分かるよ。
「沙波、あの人知り合い?」
心配そうな声色は、変わらない。
まるで、少し前の、仲たがいをする前に戻ったような錯覚に陥って思わず泣きそうになった。
「ううん。……わかんないの。わかんないけど、この前も写真、撮られて」
「何それ!!私の沙波を傷付けるなんてゆるせないっ!!」
ムキーーっ、と怒りをあらわにした千依。
しかし、すぐにはっとしたようだった。
「……ごめん。今は、私の、なんて軽々しく言っちゃダメだったね」