ひとつ、屋根の下で
スッ、と私の肩に置かれていた千依の手が離れていった。
私は思わず顔を上げる。
その勢いに驚いたのか、目を見開いた千依と視線がぶつかって。
……変わっていない、千依の綺麗な瞳にいっそう泣きたくなった。
「え、沙波?」
「……っ」
何を言えばいいのか分からない。
ただ、久しぶりにまっすぐ向き合えて、心がひたすら千依の名前を呼んでいた。
ねぇ、千依。
ごめんね。
ごめん。
もう私、本当に先輩のこと好きじゃないよ。
あの時は、先輩と浮気したこと、後悔なんかできなかったけど、今は心の底から後悔してる。
心の底から、千依にごめんねって思ってる。
まっすぐに千依の顔を見たらそんな想いが溢れてきて、離れていく千依の手を思わず掴んでいた。