ひとつ、屋根の下で
今更許してほしいなんて、虫がよすぎるよね。
分かってる。
……だから、言えないよ。
「助けてくれて、ありがとう」
それだけ、なんとか声になった。
だけど、千依の顔に浮かんだのは、苦しそうな表情。
千依は、痛みをこらえるように目を伏せた。
「……ありがとう、なんて言わないで。沙波のことをいちばん苦しめてるのは、私でしょ?」
微かな声。
千依は、泣きそうだった。
どうして私じゃなくて千依がこんなに苦しそうなのか、さっぱり分からない。
「助けられてないよ。結局、沙波は怖い思いをしたんだから。……沙波、私、心狭くてごめんね。沙波のこと許せなくて、ごめん」
千依が、私と視線を合わせるようにしゃがみ込んで、自分の手首を掴んでいた私の手を、もう一方の手で握りしめた。