ひとつ、屋根の下で
いつもは沙波と一緒に帰る俺は、その日に限って委員会があって一緒に帰れなかった。
家に着けば、いつもと同じように、強がりながらもどこか寂しそうな沙波が待っているのだろう。
……そう思っていたけれど、家に着き自分の部屋に入ろうとした瞬間、沙波の部屋のドアが開いて。
そこに、思いもよらない人物がいたことに、俺は一瞬声の出し方を忘れてしまったように錯覚するくらい、驚いた。
あちらも、ドアを開けた目の前に立っていた俺に驚いたのだろう、目をぱちくりさせている。
「……なんでいるんだよ」
思わず零れたのは、そんな言葉。
俺の目の前に立った……、沙波の想い人、戸倉雅季は困ったような顔をしていた。
そんな戸倉の後ろから、ひょっこり姿を現したのは、沙波。
少し泣いたのだろうか。
目の縁を赤くしている。