ひとつ、屋根の下で
「あ、凌。おかえり」
俺に気付いた沙波はそう言うと、ふわりと、微笑んだ。
その微笑みが、今まで見た沙波の表情の中でもすごく柔らかくて。
まるで、彼女が雨宮や戸倉とのいざこざを起こす前のようで。
その微笑みを、戸倉の前でも自然に浮かべていることに、ああ、と漸く今の状況の意味を理解した。
……やっと、終わらせられたんだな。
「……ただいま。沙波が友達連れて来るなんて珍しいじゃん」
「え?あ、うん。でも、ふたりとももう帰るって」
そのセリフに、沙波の後ろに雨宮千依がいることに気付く。
……修羅場じゃねぇか。
そう思ったけれど。