ひとつ、屋根の下で
部屋で漫画のネームを描いていたら、ふいに机の上でケータイが震えた。
ディスプレイを見ると、今は雑誌の撮影に出かけている、沙波の名前が表示されていて。
通話ボタンを押して、耳にケータイを当てた瞬間。
聞こえてきたのは、他の誰でもない、彼女のすすり泣く声だった。
「……凌」
「沙波?」
「凌、……凌」
涙に埋もれて、嗚咽に負けて、彼女の声で紡がれる俺の名前が沈んでいく。
名前を呼ぶ以外には何も言わない沙波に、俺の鼓動が嫌な音を立てて走りだした。
沙波に、何かあった……?
「今、どこにいる?」