ひとつ、屋根の下で


「おつかれさまでしたー」


撮影を終えた私は、久しぶりにすっきりした気分で挨拶ができた。


久しぶりに、スタッフさんの顔をまっすぐ見られた。


今までどれだけ自分のことしか考えてなかったか、周りが見えてなかったかを今更ながらに思い知って、私やっぱり相当落ちてたんだなぁ、なんて実感した。



「沙波ちゃん、今日すごくよかったよ。おつかれさま」


「北岡さん」



にっこり笑ってくれる北岡さんに、思わず笑みが零れた。


やっぱり、褒めてもらえたら嬉しい。



「ありがとうございます」



今まで散々落ち込んで皆に迷惑かけた分、これから挽回できるように頑張ろう、と決意を固めながらそう言う。


すると、ふいに北岡さんの綺麗な手が私の方に伸びてきて。


普段は繊細にカメラに触れるその手で、私の頭をぽんぽんと撫でてくれた。



……触れられる直前、身体が勝手にびくりと竦んだのはどうしてだろう。



「なんだか吹っ切れたみたいで良かった。……これでも、心配してたんだよ?」


私の頭から手を退けて、北岡さんは笑った。


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