ひとつ、屋根の下で


あーー、やっぱり北岡さんにも落ち込んでるの、ばれてたんだ。


「ご迷惑お掛けしました。……もうすっかり元気です!」


このとおり、とにっこり笑って見せる。


すると北岡さんが、


「よかった。……まぁ、落ち込んで儚げな沙波ちゃんも個人的には好きだったけどね」



なんて笑みを崩すことなく言うものだから、反応に困ってしまった。


とりあえず、曖昧に笑うことしかできない。



「何言ってるんですかっ!でも、本当にすいませんでした。これからはこんなことがないように気を付けます」


この前瀬野くんに怒られちゃったから、できるだけ私情は挟まないようにはしているけど、完全に心の痛みを隠すことなんてできない。


私が未熟なせいもあるし、撮影にまで影響を及ぼすようなことを引き起こしてしまった自分の行動にも問題があったと、今なら素直に思う。


先輩とのことがなかったら、あんなふうにならなかったんだし。



「私そろそろ行きますね!おつかれさまでした」



時計を見て私は慌てて北岡さんに頭を下げ、撮影をしていた部屋を出た。


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