ひとつ、屋根の下で


「そんなことにカメラを使うなんて、プロとして失格だろ。そんな奴に沙波が撮られてたんだと思うと吐き気がする。

……沙波が苦しんでた傷は、お前なんかが簡単に触れていいような安いもんじゃねぇんだよ。

もう二度とコイツに触んな。二度とその汚ない目でコイツを見るんじゃねぇ」



吐き捨てるように言った凌。


その言葉に、余計、涙が出た。


私の傷。


失恋と裏切り。


私が犯した罪の証だ。


その痛みに苦しむ私を、ずっと傍で支えて癒してくれた凌。


私の心を蝕むようなその傷が塞がらないほうがいいと言う北岡さん。



……凌。


私が抱える痛みを、北岡さんが触れていいような安いものじゃないって、凌がそんなふうに思ってくれるだけで、もう、いいよ。


人が傷付いてる姿が好きだなんて、正気の沙汰じゃないって私も思うし、後を付けられたりしてずっと怖かった。

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