ひとつ、屋根の下で


「……あれ?」



あれから数週間後。


撮影のために着替えを終えて現場に入った私は、ふと首を傾げた。


「今日のカメラマンさんって……」


スタッフさんに声をかけると、意外そうな表情を向けられた。


「あれ、沙波ちゃんは高橋さんに撮ってもらうの初めてだっけ?」


「えと……」


いつも北岡さんがいる位置にいるのは、知らないカメラマンさんだった。


高橋さんっていうのか。


戸惑ったような私に、スタッフさんは合点がいったように頷いた。


「ああ、そっか。沙波ちゃん、北岡さんのお気に入りだったもんね。

何も聞いてない?……北岡さん、この雑誌ではもう撮らないって」


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