ひとつ、屋根の下で

***


「おつかれさまでしたー」


「よ」


「わああっ!?」



撮影を終え、着替えて外に出るといきなり声を掛けられて、びっくりして声のした方を見ると。


「瀬野くん!!」


「声デカ」


「失礼!!」


相変わらず失礼な瀬野くんが立っていた。


声を掛けてきたときはいつものどこかからかうような雰囲気だったけれど、ふいに真面目な顔になる。


「……今時間ある?」


そう言った声も真剣そのものだったから、きっと北岡さん関係の話だって、なんとなくわかった。


頷いて、連れていかれたのは、近くのカラオケボックスだった。


なんでカラオケ?

と思いながら瀬野くんの後をついていく。



でも、部屋に入った瞬間、すぐに答えを告げられた。


「……こんなとこでごめん。でも、他に個室って思い浮かばなくて。いきなり俺の部屋に呼ぶのも変だろ?」


「あはは、歌いたいのかと思っちゃった」


私の言葉にちょっと笑って、瀬野くんは持っていた鞄から何かを取り出してテーブルの上に置いた。


思わず、身体がビクッと震えた。

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