ひとつ、屋根の下で


「……これ」



それは、裏返された写真だった。


おそるおそる瀬野くんを見ると、まっすぐに視線がぶつかった。


「秋吾さん、まだあんたのことをまっすぐ撮れる自信ないからって、しばらくはあんたと仕事一緒にならないように調整するらしいよ」


「……あ、そう、なんだ……」


「……これ、秋吾さんがあんたを撮った写真。一応全部だと思う。見たくなかったらそのまま捨てて」


私は、ゆっくりその裏返された写真の束に手を伸ばした。


「……瀬野くん、見た?」


指先が写真に触れる前に、顔を上げて訊く。

すると瀬野くんは、少しだけ申し訳なさそうな顔をして、静かに頷く。


「……ごめん。でも、それ秋吾さんの部屋から探すのに見なきゃならなかったから」


「ううん。……ありがとう」


私は、意を決してその写真を手にとり、裏返した。


「……」


一枚一枚、めくっていく。



撮影からの帰り道。


学校からの帰り道。


撮影の合間。


どれも、私の視線は自分の足元や空を見つめていた。


「……っ!?」



そんな写真の中に、一枚、学校の中で撮られたものがあった。


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