ひとつ、屋根の下で


「もしかして、瀬野くんは北岡さんがこういうことしてるって、知ってたの?」


瀬野くんと初めて言葉を交わした時のことをふと思い出して、そう訊いた。


北岡さんのことを惑わすな、なんて言われてあの時は意味が分からなったけど……。

ブサイク、なんて言ったのも、もしかしてそんなことを言う瀬野くんに近づきたくないと思うことで、瀬野くんと一緒にいる北岡さんにも必然的に近づかないようにするため?



私の言葉に、瀬野くんは表情をくもらせた。


「……なんとなく。ここまでしてるとは思ってなかったけど、異常なくらいあんたに執着してることには気づいてたから、このままじゃなにかしでかしそうで怖かった。
あんた、一時すごい落ち込んでたけど、それより前からどこか儚げな表情すること多かったから……、秋吾さんがあんたに執着してたの、結構前からだよ」


「……そっか」


すごい落ち込んでたのは、千依と先輩を失ったとき。


それより前、ってことは私、やっぱり千依に隠れて先輩と会ってる時点で気付かないうちに周りにわかるくらい罪悪感感じてたのかな……。

< 303 / 377 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop