ひとつ、屋根の下で
「……俺、秋吾さんの撮る風景が好きだった。すげー、キラキラするんだよ、あの人が撮ると。
何でもない朝焼けも、夕日も、海のしぶきも。
俺もそういう写真が撮りたくて、あの人についてきた。
一緒にいたの、短い時間じゃないからさ。
あんたのことがあって、人間として最低だと思っても……、俺はあの人の傍を離れられない」
「……うん。瀬野くんは、北岡さんの傍にいてあげて」
私は、どうしてか申し訳なさそうな顔をする瀬野くんに、微笑んで見せた。
……大丈夫。
私なら、大丈夫だから。
「……もう、あんたを弱らせて苦しめてた問題は解決したんだよな?」
「え?……うん」
先輩と千依のことだろう。
どうしてそんなことを言ってくるんだろう、と首をかしげつつ頷く。
「……じゃあ、今あんたをそんな顔にさせてんのは、何?」
「え?」
「秋吾さんのことだけじゃないよな。……あんた、自分では気付いてないかもしれないけど、写真見てからすげー泣きそうな顔してるよ」
「え……」
思わず、表情がこわばった。