ひとつ、屋根の下で


「……こんなに情けない顔してたんじゃ、凌も放っておけなかっただろうなって、思ったの」


気付けば、そう言っていた。


「凌はなんだかんだ言ってすごく優しいから。……触れるのは仕事のためってやっぱり本当だったんだなって思って。

こんな、死にそうな顔してるんじゃ、慰めて元気出させようと思うだろうし、仕事のためって予防線張らなくちゃもしかして私が凌のこと好きになっちゃうかもって思ったんだろうなって、思って……」


触れるのは仕事のため。

ちゃんと凌はそう線引きをしていたのに、私は結局凌のことを好きになってしまったけれど……。



「……仕事?……ああ、アイツ、漫画家だっけ」


瀬野くんの言葉に私は頷いた。


そのまま、顔を上げられなくて俯く。


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